こころの子育て・その1


河合隼雄さん『こころの子育て』より


考えないといけないのは、「これからどうするか」だから、過去の何が悪かった、と言ってみたところでしょうがないんです。でも、これからのことを考えようとしたら、ある程度過去のことも考えざるを得ない、ということはあります。そのときに「そのことで自分が責められるわけではないし、そこから何か変わるきっかけが出てくるかもしれない」という気持ちでいれば、考えを進めやすいんです。


何かが変わるには、それに関わる全体のシステムが変わらないといけない。だからものすごい大変なことなんです。


だから問題が起きたらば、その原因を追及するんじゃなくて、それによって、自分はどう生きようとするのかを考える。その問題は自分の生き方とどう関わっているのかを考えたらいい。


子どもに問題が起きたときは、その家族全体にとって、何か課題を乗り越えなければならないときが来ているのだ、と考えてみたらいいですね。


ただ、この時期 [生まれてから三、四ヶ月間のこと] に基本的信頼が確立すれば一生それでいける、なんてことはないんですよ。そしてこの時期に確立しなかったら一生ダメということでもない。人生はなんやかやの積み重ねですから。不幸にして、そのときにそれを体験しなかった人でも、あとでまた回復するチャンスはあります。


子どもを愛する、なんて、ほんとは大変なことですよ。相手はムチャクチャするんだから。そのときに「子どもはどんなときも愛さねばならない」という前提があったら、いつも愛せない自分が悪いと思うか、嫌になってくるかしますよ。


人間のこころは不思議なもので、案外相反する傾向を持っているのです。赤ちゃんを愛すると言っても、逆に憎いという気持ちはある程度あって当たり前とも言えます。そこで、思い切ってマイナスの気持ちがあるのを肯定すると、プラスの方が動き出すということがあるのです。マイナスはいけないと思い、抑え込みすぎていると、ブラスも動かないというところがあります。焦らずに自分の気持ちを受け入れることです。


世の中に下手な子育てはあっても、どんな子にもあてはまる「よい子育て」というのはありません。下手な子育てというのは、親がいつも怒ってるとか、子どもをほったらかしてるとか、食べ物をやらないとか、いろいろあります。でも、みんなに共通の便利な方法、よい方法、というのはない。


子育てが思うようにいかないと、「自分が悪い」と罪悪感を持つ人がいるけど、そんなことはおかしいんで、どんなよい親でも、どんなよい子でも、思うようにならないときというのは必ずあるわけです。ぼくなんか時代遅れと言ってもいいかもしれないけれど、思い通りにならないことこそほんとにおもしろいことだと思ってるんです。というよりも、ほんとは、思うようにならないことほどすごいことはないんですよ。それこそが人生、そこでこそその人の個性が生きるわけですから。
それとね、そうやって思うようにならなくて、あれやこれや考えてもどうしようもないときは、寝るんですよ。それが一番です。目が覚めたら、また変わってますよ。ひと晩たつって、不思議ですわ。

  • 最終更新:2008-12-08 12:28:23

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